社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

狐花 葉不見冥府路行

福島の桃の余韻に浸っていたが、矢ッ張りもう1回食べたくなった。
品種名が明記されない、「福島の桃」とだけある桃を買って来た。
美味しい事は美味しかったのだけど、改めて頂いた桃の有難みを思い知った。

「狐花 葉不見冥府路行」(京極夏彦KADOKAWA)読んだ。

文庫待ちする筈だったが(実際年内に文庫版出るらしいよ)、初版の武蔵晴明神社の御札欲しかったので待てず・・・。
作事奉行・上月監物の娘が惹かれた男の姿を見て怖れる女中。
上月監物は材木問屋・口入屋との間になんか悪事を隠している。
材木問屋・口入屋其其の娘、上月監物の女中もなんか悪事を隠している・・・。
見え隠れする謎の男・萩之介は此の世に居ない筈、なのにあちらこちらで見え隠れする・・・。
一体何があったのか、何が起こっているのか、何を企んでいるのか。
萩之介の正体は一体。
中禪寺洲齋は何をどう”憑き物落とし”するのか・・・。

章タイトルにあるように、曼殊沙華がアクセントになっていて美しい。
文章で紡がれている筈の一つ一つがどれも皆美しいのだ。
殊に「死人花」は舞台で観たらさぞかし美しかろう、と思う。
歌舞伎だと演者でアタリが付いちゃうのか、何役も演じはるからそうでもないのか。
こないだ「結」読んだ所為もあるけど
sociologicls.hatenadiary.jp
「狐花」は浄瑠璃になっても良いのではないか、と思った。
文字だけで楽しむと「え、其処がそうなるの!」だった、歌舞伎という実体を観るとどう楽しめるのだろうか。
観たくなった。
生で観られたら御の字だけど、せめてシネマ歌舞伎で観られないかしらん。

「葉不見」とは?・・・と思っていたが、言われてみれば確かに曼殊沙華ってそういう花なのだった。
花の赤さに気を取られてうっかりしていた。
洲齋は「不思議なことなどない。しかし、偶然というものは時に不思議としか思えぬような縁を示してくれるものです」なのか。
悪い奴が成敗されたらスカッとする、でも一方的に成敗されるだけじゃないから深みと渋みがある。
単純に成敗されるよりも重い、厳しい”罰”を負わされているのだし。
どんなに焦がれても、自分には欲しいモノが手に入らない、満たされる事も愉しいという事も無い、無いまま生かされるという。
「ヒトでなし」っぽさもあるな。
一番悪い奴の非道っぷりもだけど、最後に全て明かされるけど解決し切らない、何とも言えないもやりもやりとした感触が残る所が・・・。
だが其れが好い。

どうでもいいニュース:
最近オカンが歌舞伎にハマってるらしくて、シネマ歌舞伎は其の流れで知った。