社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

案の定、「うああ要らん事言うた」「てっかてかに恥の上塗りしてもうた」ってなってる。
筋肉痛よりも早く。

「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」(大島真寿美/文春文庫)読んだ。

浄瑠璃・・・今でいう人形浄瑠璃の話。
幼少の頃から大坂・道頓堀で操浄瑠璃に慣れ親しみどっぷり浸かり、父からは近松門左衛門の硯を貰った少年が近松半二となり浄瑠璃の作品、中でも「妹背山婦女庭訓」を生み出していく人生を描いた物語である。
当時は操浄瑠璃の他に歌舞伎も隆盛を極めており、切磋琢磨し合い・・・なんだけど、歌舞伎に押されてきていた。
其其の小屋にいる演者・作者、半二の家族や関係者、様様な出会いがあり、いずれ去っていく。
其の時代の影響を受けて小屋だって変わっていく。

ええ作品は盗んで練り上げてもっとええ作品として舞台に掛ける、其の繰り返し。
そしてお客さんの頭ん中までも混ざり合い、昔から受け継がれた作品も今まさに書かれ演じられる作品も演じる人達人形達含めて渦の中。
自分の中から生まれてくるものを書いているのか、どっか遠くにあるもんを見つけ出して書いているのか。
もしかしたら、そうやって書いている自分達も他の浄瑠璃の中で会話しているのかもしれない、という。
(ドキッ・・・正にそんな彼等の姿を小説という形で観ているのですよ、読者である自分は)
でも半二は書かずにいられない。
何にしてもアツい。

「妹背山~」のお三輪に、客である女性達が己の気持ちを重ね、己には出来ない事をやる姿に心を寄せていく。
其れも大人気の理由の一つだったようだ。
書けたのは半二の経験・・・兄と想いあっていたのに別れざるを得なかった女性の気持ちを知った事、其れすらも渦の中なのか。

面白いけどみつしりとしていてなかなか読み進めない、其れは其れで良し。
細やかに細やかに描いていって、其の一つ一つにほほう、となるんだが、ふと目を離して観てみると違う絵が浮かび上がっている。
気がついたら読んでる自分も渦に巻き込まれている、読んだ人みんな巻き込まれる、恐らく作者も直木賞や大阪ほんま本大賞を選んだ人らも巻き込まれてる。
物語のパワーにただただ圧倒される。飲まれる。

ところで、作者は名古屋の方らしい。
まじで?
めちゃくちゃネイティブな大阪弁で書いてはるんですけど。
時代物というのもあるかもだけど、殆ど違和感が無い。