社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

伊勢物語

今日は一日寝よう、と思いながらも起きてのんびり過ごしている。
噫、リビングに炬燵があれば。

伊勢物語」(川上弘美・訳/河出文庫)読んだ。

雨子さんがお読みになるという事で
poolame.hatenablog.com
そういえばうちにもあった、自分も読んでみようと考えた。
但し当方は原典ではなく川上弘美が訳したバージョンを。
盗み出した女が鬼に食われる話(六段、雨子さんに依れば「芥川」と呼ぶようだ)と東下りの「かきつばた」「都鳥」読み込む話(九段)は古文の授業でやったので知っている。
改めて読み返したけど、慣れ親しんだ妻が居る癖に厭んなって東国行くんかい!
和歌含めて分かりやすく現代語訳してある、古典だけど川上ワールド的な感じ。
川上さんの小説が嫌いでなければ、此のバージョンもお勧めである。
あとがきの川上さんの解釈も面白いなと思う。

読む前は昔男(在原業平?)が色んな女にちょっかい掛けたり和歌読んで感動させたりする話なんだと思っていた。
実際読んでみると其処迄単純な話ではなかった。
短篇集、色んなシチュエーションがあって女にちょっかい掛ける話もあればなかなか靡かない話、袖にされる話もある。
両想いはあんまり無い、懇ろになったけどどちらかが心変わりしたり会いに来なかったり、矢張り恋愛モノといえば男と女のすれ違いなのか。
在原業平以外の”昔男”もあるのかもしれない。
恋愛モノ以外もあった。男の友情や姉妹の夫の身分違いのあれこれとか。
在原業平が普通に出てくる話とか(六十三段)。
年を重ねても恋する事を諦められない母の為に息子が在原業平に会わせようとする。
かーちゃんが恋したがってるからって息子がモテ男連れてくるって何だかなァ・・・平安時代だとそんな変でもなかったんだろうか。
逆にフィクションだからかーちゃん世代が「あたしだって!」とときめいたのか、「うわきんもー!」って当時でも思われてたのか。
解題に依れば一人の人が全部「伊勢物語」書いたんじゃなく、複数の人が追加したり書き直したりしたと考えられているそうだ。
とすると、六十三段は誰かが当時どんだけ在原業平が人気あったか書き残したれ、って足した話なのかもしれない。
六十五段がヘヴィである。
少年が女を好き過ぎる、女も想いを断ち切れなくて、でも断ち切ろうとして其れでもやっぱり無理で、其れ故に一層会えなくて。
いけない事をしてしまった、とはいえ其処までやるかね、と。
六十九段の伊勢の斎宮との物語が「伊勢物語」の由来らしい。
雅である。
最期は「生きるとはなんと驚きにみちたことだったか」と人生が締め括られる。

恋愛とは、いや人の気持ちというのは移ろう儚いもの、なのか。
儚いから、少しでも多く濃密に残したいから、和歌や物語にしたのか。

河出文庫古典新訳コレクションは今迄読んだ2作が凄く読み易かった、此のシリーズから「土佐日記」も読んでおきたい。
円城塔の「雨月物語」も気になる。