社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

カメムシ、ちょっと落ち着いたかな・・・と思いながらドア開けたら嫌がらせレベルで廊下に落ちている。

「かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖」(宮内悠介/幻冬舎文庫)読んだ。

不本意ながら幻冬舎(恒例)。
「第一やまと」で開かれる、詩人・劇作家木下杢太郎、北原白秋等が集った牧神(パン)の会。
美のための美の運動・・・という芸術運動を興すのである。
しかし其処で語られるのは美についてだけじゃない、殺された菊人形、浅草十二階からの転落、産まれた直後に目玉と臀部をくり抜かれた赤ちゃん等の謎。
行き詰った頃に現れるのは女中・あやの。
王道の、ええ感じのミステリーである。
最後の「未来からの鳥」は「宮内さんだしこーいうミステリーなんだと思ってたよ!」だった。
好き。
明治の頃だと、そういう考え方になるのかー、というのも面白い。
アイザック・アシモフ黒後家蜘蛛の会」の形式という事で、各話毎に覚え書きが附いている。
実在した人物が登場するが、其の裏側が紹介されている・・・というか丹念に掘り起こされたエピソードが物語に描かれている。
其のエピソードも史実だったんかーい!御本人が知ったらびつくりするよ!
「ごめん」って覚え書きに書きたくもなるわな・・・。

謎を解く一方で「美とは」が語られている。
「美のための美」とは。
本物を超えうる美、美のために死ねるか、等。
或いは美と政治。
帝国主義の不穏な空気を感じてはる。
「美のための美は虚構ゆえに危うい」と。

そして謎を解き、「美のための美」をみんなで考察する中で、杢太郎は一つの未来を選ぶ。
どの未来を選ぶのだとしても、今此の瞬間の「美のための美」を謳歌する青春だった。
青春と其の終わりについての物語だったんだ。

其れにしても登場するご飯が美味しそうだ。
流石にご飯は其の当時には存在しなかったらしい、でももしかしたら実はあったかもしれない。
杢太郎がレシピを翻訳する下りもある、明治の料理人はそうやって外国のレシピを手に入れては、本邦にある食材で再現し、提供してはったんやろな。
面白かったのが、フランス風おこげ?
・・・グラタンか。
「覚え書き」によれば、マカロニの代わりにおうどん入れたのがあったとか・・・まるでフランス風小田巻蒸しではないか。