社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

この本を盗む者は

「この本を盗む者は」(深緑野分/角川文庫)読んだ。

本の町”読長町にある御倉館で起こる物語。
御倉館には主人公・深冬の曽祖父が蒐集した本が収められていて、其の頃は外部の人も入って読む事が出来たが、其の娘(深冬の祖母)の代になって一族以外入る事すら出来なくなった。
御倉館の本全てにブック・カース・・・一族以外の者が館の外に本を持ち出すと発動する”呪い”。
物語を盗んだら、物語の檻に閉じ込められる。
・・・というか、町全体が其の物語の世界に変わってしまう。
泥棒を捕まえたら元に戻るが、早く捕まえないと・・・元に戻れない、では済まなくなる。
現在は深冬の父と伯母が管理しているが、父の入院中に深冬がブック・カースに巻き込まれていく。
色々違和感はある。
・堅牢そうなのに何でそんなにほいほい盗まれるのか。
・元に戻らないだけじゃなく、狐化するのか。他の動物にはならないのか。
・ブック・カースが発動すると、物語の登場人物が深冬の周りの人物になってしまうのは何故か。深冬が本嫌いで普段あんまり読まないからか。
・地の文章の鮮やかさの割に小説があまりこなれてない、なんかぎこちないというか微妙というか。
・・・けど、読んできゃじきに解る。
安心して読むが良い。
次から次から本が謎を呼んでくる、という意味では森見登美彦の「熱帯」ぽいかもしれない。
でも「この本は~」は読長町から出る事は無い、というか出られない。
物語から出られなくなっちゃう、追っかけられようとどうなろうと。
限られた範囲だけど、めっちゃ冒険する。物語の中だし。
体力のある時に読むのが良いと思う。

夏休みの宿題のネタ・・・感想文に良さそう。
宿題はさておいても、夏休みという“特別な日常”に読むのは如何。
だから「カドブン夏推し2023」のタイミングで文庫版出たのかー。

其れにしても。
読まれない本ほど不幸なもんは無いわ、ばーちゃん。

深緑さんは他の作品も読みたい、というか文庫待ちしてたら結構文庫化してたわー。