社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

異常論文

普段よく行く本屋にハヤカワ文庫JAの新刊が入らないので「ハヤカワ文庫の新刊いつ入りますか?」「『異常論文』って言うんですが」と聞いてみた。
「うちが注文したら入ります」との事。
Oh・・・「入荷したの1冊だから棚に無ければ売切」「まだ棚出ししてない」「遅れて入る」の何れかと思ってたよ。
本屋と取次、どちらの仕打ちか、采配か。
今後ハヤカワ文庫新刊欲しければ予約しなはれ、って事か。ううむ。
そこそこのキャパの本屋でハヤカワ文庫の棚が充実してるのに。
忘れた頃に「ポストコロナのSF」積んでるのに。
飛浩隆フェアっぽい平積みもあるのに。「零號琴」無いけど。

「異常論文」(樋口恭介・編/ハヤカワ文庫JA)読んだ。

そもそも異常論文って何なん?
www.hayakawabooks.com
巻頭言からしてめんどくさい(褒めてる)。

”ザ・論文!だが数式いっぱい出てくる”円城塔で篩に掛けるのかと思ったら、ああいう論文からも逸脱するようなんがある。
そもそも論文って何なん?
講評とか解説とか倒し方とかあるのはさておき、ふつーに小説やん、なのがある。
それは「異常論文」に収録されて然るべきなのだろうか。
もしかして”異常論文を書く背景”を書くのもまた異常論文なのか。
麦原遼の扉に

執筆者たちは論文を書こうとするが、最後に残されるものは何か異様な記述のかたまりである。(中略)本書はそうした記述の塊を<異常論文>と呼んでいる。あるいは、それらは単に小説と呼ばれる。

とあるから、多分其れもアリなんだろうな。
逆に“異常論文”という縛りがあるからこそ自由奔放に出来るのかも。
大事なのは”異常論文”として”面白い”かどうか、だ。書いた人、読んだ人が”異常論文”って思ったらそれでええんや。
というか敢えてザ・論文!な円城塔で始めて「論文とはこういう感じのモノねー」と思わせておいて読み進めるうちに「はァ!?」ってさせる作戦だったんだろうか。恐ろしいな。

陸秋槎「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」、柴田勝家「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」を理解するだけの知識・知性が欲しかった。
義務教育+高校の授業、大学の一般教養はこういう時に役に立つのです。

其の他気になったのとか色々。
決定論的自由意志利用改変攻撃について/円城塔
見る人が見たら何をベースにした数式か解るのだろうか。
・掃除と掃除用具の人類史/松崎有理
掃除について、住居から宇宙まで。ちょっと明るい未来も。
「掃除とは無秩序を増大させる力だった」って、それな!
「おもしろい至上主義」って名付けが雑で怠惰で分かりやすくてよい。
・「世界の真理を表す五枚のスライドとその解説、および注釈」草野原々
ガチ論文でこういう注釈だらけなのはOKなんだろうか。
フランス革命最初期における大恐怖と緑の人々問題について/高野史緒
好き。
「ムー」好きな人はきっと好き。
・SF作家の倒し方/小川哲
一番読み易いと思うが、此の中に混じってしまうと一番おかしい。
・第一四五九五期<異常SF創作講座>最終課題講評/飛浩隆
普通に通常営業の飛さんじゃん。
異常SFは”読む”というより”体験する”というものになったのだろうか。
此れも最後も<事態>の影響なんかも。
家にオペラ劇場が届く作品の講評の締めが其れか・・・最終課題で其れか。わろた。
・オルガンのこと/青山新
お尻もぞもぞする。。。
・四海文書(注4)注解抄/酉島伝法
さっき「ガチ論文でこういう注釈だらけなのはOKなんだろうか」って書いたけど、最早注釈しかない。
流石「隔世遺傳」作らはった人や。「隔世遺傳」は延延とループして読める。
「四海文書注解抄」もまた、何等かの異常論文の資料なんでしょうな。メモ書きは誰かの異常論文書く時のメモ。
で、其れもまた誰かの・・・。
・無断と土/鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)
世界観(?)が凄く好き。
設定・登場人物を共有した連作、読みたい。
ただ、冒頭のやつはページ渡ってるのが勿体ない。。。
・解説──最後のレナディアン語通訳/伴名練
伴名練は伴名練。
日本SFの臨界点シリーズの解説のアレを実在しない(と思う)作家でやるという。
其処までして監禁したかったんかい。

神林長平の解説が“異常解説”じゃなくてよかった。
・・・神林さんやん、お書きになる解説を読んだらとぅるん、としてやしないかと思って。

どうでもいいニュース:
読んでる最中のバカテンションのまま、此のエントリを書きたかった。そんな体力が無かった。。。