社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

走馬灯のセトリは考えておいて

アイドルの「恋愛禁止」は、極一部の厄介ファン避けでもあるのでは、と思わないでもなかった。
「恋愛禁止だから、ファンが恋しても何しても叶わないよ」っていう。

「走馬灯のセトリは考えておいて」(柴田勝家ハヤカワ文庫JA)読んだ。
此のタイトルで此のジャケ写表紙はエモい(敢えてそう言うぞ、表題作を読めば解る)。
走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)
半分くらいは他のアンソロで読んだ事がある作品。
こんなん何回読んでもいいですからね。
以下、ネタバレするかも。





・オンライン福男
えべっさんの福男選びが如何にしてオンライン化し、進化していったのかを解説、大津戎神社のパンフレットやHPに掲載されてそうな文章。
めたばーすとやらをやってくなら「オンライン福男」実現してよね。
・クランツマンの秘仏
「異常論文」の魁。
再読して思ったけど、もしクランツマンが家族を顧みておればクランツマンの霊的質量が減らずに秘仏御開帳!だったのでは、そして息子が日記を読んで後追い調査したからクランツマンは秘仏となって厨子に入れたのでは。
・絶滅の作法
タイトルの印象とは違ってセンチメンタル。
異星種にとっての移住体験は、読んでる自分にとっての日常生活なのに、なんだか懐かしい。
人間自体は絶滅してるのに、こうやって”生き残って”んだな。
・火星環境下における宗教性原虫の適応と分布
「クランツマンの秘仏」から「異常論文」が始まったのだが、実際の「異常論文」に収録されたのはこちら。
此れを理解出来る知能・知性が欲しかった(またかよ)。
地球に於ける宗教の適応と分布も、こんな風に誰か観察して論文書いてはるんかもしれん。
・姫日記
のぶやぼ!
ああーゲームの世界に転生したんですね。
って、此れ実在するのか。
もう小説なんだかガチ日記なんだか解らない。どっちでもいい。
・走馬灯のセトリは考えておいて
タイトルだけできゅんとくる。エモい物語。
死後もライフログから”ライフキャスト”を作って其の人を残せる時代に、自分自身ではなく”バーチャルアイドル”としてライフキャストを作り、此の世を卒業するラストライブを行う・・・という話。
バーチャルアイドル”と”中の人”を巡る話、なのかと思いきや、其れだけじゃない。
何故其のバーチャルアイドルは生まれたのか。魂って、本物って何。お父さんの正体。
ラストライブはどうなるのか。
情報が沢山あればあるほど正確なモノが出来るのかもしれない、でも其れだけじゃなかったんだな。
其れが一体何なのかは未だ自分は説明出来ない、ただバーチャルアイドルに託したから実現出来たのかも、とは思った。
人の気持ち、想いもデータ的に残せるのかもしれない。
あと、よく考えたら”悪い人”が出てこない。
想いの強さ、純粋さを描く、だから”悪い人”は居なくていい、ただ登場人物みんな力いっぱい生きていればいい。
”祈り”なんだ、其れが。
そして信仰活動(推し活)で”崩壊”を経験されているのに、されているのにも拘らずお優しいんだよな・・・ファンにも推しにも舞台裏にも全ての人にも。
規模問わず“みんなハッピー”は難しい、だからこそ柴田さんの描くバーチャルアイドルのライブが眩しくて美しいのかもしんない。
此れが柴田さんの”祈り”なのかも。