社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

証言!日本のロック70's ニューロック/ハード・ロック/プログレッシヴ・ロック編

歌は世につれ、世は歌につれ。

「証言!日本のロック70's ニューロックハード・ロックプログレッシヴ・ロック編」(難波弘之井上貴子・編/アルテスパブリッシング)読んだ。

1970年代の日本のロックシーンで活躍した方方が生きてるうちに生の声を記録しよう、というトークイベントと書籍出版の試み。
レギュラースピーカーが難波さんの他にPANTAさん、ダディ竹千代さん。
ゲストスピーカーが土屋昌巳さん、山本恭司さん、岡井大二さん。

当時はというと。
レコ社主導だったのがミュージシャンが自分のやりたい音楽を自分でやろうという意思を明確にするようになった。
そして現在のロックがほぼ完成した、日本のロックの方向性を決定づけた。
頭脳警察が闘ったのは世間だけじゃなかったんだ。
今、メジャーで色々やれてる、レコーディングして音源リリースするという流れが出来ているのは彼らのおかげなんかも。
ロックバンドとして初めてアーティスト・ロイヤリティを発生させたのが頭脳警察だったそうだ。
歌詞について「責任の取れる歌詞を」って話もある。
ボーカルではなくても、バンドとして自分を表現する言葉なので。
今其れが出来ている人ってどの位あるんだろうな。
歌詞の意味・重みじゃなく音としてどうなのか、が優先される場合もありそう。
逆にただ気持ち乗っけて音鳴らして歌ってます、じゃ駄目だろうし。

叫びたいから大音量、マーシャル、ファズやディストーションが出てきたんでは、こういう音が欲しいという欲望が大事なんじゃないかな、という話が面白かった。
そういう所から音楽が生まれるし、機材も生まれる。
ヤマハがギタリストを招いてブラインド・テストしたりしたそうだ。

2009年の本なんで、今の配信ばりばりを予測しつつも、此処まで配信ありき、サブスクが広まって「サブスクで聴けない音楽は存在しない」みたいな事言い出す人が出るとは思ってはらへんかったやろうと思う。

70年代に生きた若者の話としても面白い。
しらけ世代”と言われた事について、当事者の思う所が少し語られている。

所所、ベテランさんのボヤキになってる。
井上さんと難波さんの話してはる感じがね・・・大学で接する学生が不甲斐ないんでしょうけども。
音大でロック教えるのもアリだと思うよ、でなきゃ聴かないままミュージシャンやる奴出てくる。
「今の若いのは〜」よりは「当時はこんなに面白かった、カッコよかった」を聞きたかった、読みたかった。
「日本で反体制色が一番強いのは山下達郎だと思いますね」とか。
バックバンドだと思って「やめちゃえよ」って言った相手が其のバンドのメンバーだったとか。
PANTAさんとアリスのドラマーが交友あったとか演歌の曲書いたとか。
山本さんが渡辺香津美さんとギターで音真似しながらネタ披露したとか。
土屋さんの「GSブームはサイケデリック文化だった、評価が低いのをとても残念に思う」っていう話が読めただけでも十分有難い本ではあるが。
四人囃子が衣装カジュアルだったって意外、そういやライブ映像観た事なかった。
書籍に収録されない部分に沢山あったんだろう、其れこそ過激でオフレコにしないと拙いとか。
山本さんはそんなんじゃなくて良かった。

なんかねえ、「ロックは死んだ、終わった」って言う人がいるから死ぬんだ、終わっちゃったんだ。
予言の自己成就的に。
そういうのはアティテュードとしてロックじゃねえ。
(て野暮言うのもロックじゃねえな)
でもなんだかんだでロック自体は生き残るんだ、ただ其の姿が難波さん達の世代とは変わってしまっただけで。
若しくは居ても難波さん達迄届かない。
オリジナルには勝てないじゃん。

読んでて考えたんだが、縦軸のロックと横軸のロックがあるのではないだろうか。
縦軸はビートルズチャック・ベリーの時代から流れているロック。
横軸は其の時々の、其の世代のロック。
縦軸で見ている難波さん達には手温く見えても、横軸の、各時代の刹那刹那では充分ロックだったりするんでは。
今はあまりに色々あり過ぎて、見えないモノが沢山あるんじゃないだろうか。
其のレイヤーを1つ捲れば、縦軸で見ている人が気づかなかったロックが居てる。

今はちょっと事情違うのかもしれない。
頭脳警察黒猫チェルシーの澤くん・宮田くんが参加してるし、「今のホニャララ」にも受け継がれてるモノはあるんだ、って伝われば。

パンクロック編もあるようだが、読むかどうかどうしよう・・・。
エピソードは面白そうなんですけども。

どうでもいいニュース:
あのへんの人達から見て、TOSHI-LOW増子直純吉村秀樹はどう見えるんだろうな、とふと思った。
吉村さんは物凄く音にも言葉にもこだわっていらっしゃいましたし。