社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

機巧のイヴ

昨日、凄まじくバスが遅れていた。
何本もやってくるバスの幻を見た。バスが来た!と思ったら何処かの幼稚園のバスだったとか、トラックとか。
乗りたいバスがトラブった?と思ったが、「Wanderland」か「BLUSH FOOL EXPERIeNCE」が10回以上聴けるくらいの時間待って、漸く来た空き空きバスは特に何もなさそうである。
降りしなに聞いてみたら事故が原因の渋滞だったそうで。後で調べたら「え?」と思うようなとこの影響。
バスの幻を見ながら会社に「遅れます」と連絡を入れたが、ギリギリ始業時間に間に合って驚かれる。自分も驚いた。

「機巧のイヴ」(乾緑郎新潮文庫)読んだ。

江戸時代っぽい世界。
天府一の花魁・伊武の正体は機巧人形。
天府の悪事はお天道様が許してもあちきが許さないよッ!悪いヤツはばったばったぶッた切っていくSF活劇!
・・・ではない。
もうちょっとヒューマンな感じ。
愛した遊女を自由にしたいが我が物にもしたい・・・と機巧人形(オートマタ)を作ってくれ、と幕府製煉方手伝・釘宮久蔵の元に男がやってくる所から始まる。
蟋蟀を闘わせる”闘蟋”に出された機巧人形の蟋蟀を見て訪ねてきた。
が・・・そっち!?
と思ってるうちに次の話へ。
機巧人形として作られた伊武の恋、久蔵の師匠が起こした幕府転覆事件、製煉方の金の流れを追う隠密、後継ぎ問題を抱える天帝・・・すったもんだの末蘇る神器。
すれ違いありアクションありSFあり伝奇あり、色々あり。
表紙はキリッとしているが伊武さん、実際はめっちゃ可愛らしい。
そんな中、物語を通じて問われるのは「機巧に魂が宿るのか?」。
久蔵は宿る事など有り得ないと考える、しかし機巧の伊武は夢を見るし、人間になれますようにとお百度参りをする。
人っつうモノも機巧なのかもしれない。
「魂と、魂にあらざるものの間に境目はない。ただ複雑さと多様さに差があるだけだ。」(P.299)とあるし。
其の差は一体何処から来るんだろう?
錬金術的な石を入れたら魂を持つという訳でも無い、永く生きたら其のうちに魂を持つという訳でも無い。
人に似てくれば似てくる程魂を持ちやすくなるのか?
想いの強さだよ・・・と思ったが、その強さは何処から来るのか。
結局ハートなような気はする。
久蔵が「有り得ない」と考えるのは”機巧に魂を持たせる”事の怖さを知っているから、
そして「有り得ない」と突き放して考えられる人だから、伊武は魂を持つ事になった・・・のかな。

いつか伊武の願いが叶うと良いな、天徳は”なれの果て”から姿を取り戻して二人の思いが通じると良いな。
(よく考えたら此の二人は対になってるんだな、精巧な体のみで本来は魂の無い筈の人と、体は仮で魂のみ在る人)
昭和っぽい時代くらいまでは話が続いて欲しい・・・がどうなるんだろう。
「NOVA2021年夏号」の「勿忘草」まではまだもうちょっと掛かりそうである。
sociologicls.hatenadiary.jp
因みに「機巧のイヴ」好きという方にNOVAに番外編ありましたよー、とお伝えしたらびつくりされていた。

どうでもいいニュース:
単行本と文庫とであらすじから受ける印象が全然違う。
大幅加筆改訂あった的な?