社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙

「日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙」(伴名練・編/ハヤカワ文庫JA)読んだ。

「恋愛篇ってあるから買ったけど恋愛あんまりなかった」てな感想見たな。
その人が“一般的な恋愛話”と思ったのはどの作品なんだろう。気になる。
自分は逆に「案外真っ当な恋愛、愛の物語が多いな」と思った。
今更だけど「アトラクタの奏でる音楽」の「蔵蔵」のモデルは磔磔なのかしらん。

面白かったやつとか。
・死んだ恋人からの手紙/中井紀夫
「虚無への供物」の人・・・それは中井英夫
恋人から”あくび金魚姫”へ送られる手紙、ただその手紙は亜空間通信の都合上送った順番とは限らない。時間が前後している。
あくび金魚姫はさぞかし魅力的な人なんだろう、恋人からめちゃくちゃ愛されていたんだろう、そして恋人もまた人柄が好かれていたのだろう。
恋人が出会った人達からも手紙が送られている。
それにしてもあくび金魚姫側はどうなっているのだろう、ほぼリアルタイムなのか、過去の恋人からの手紙なのか。
もしかしたら恋人が出会う前のあくび金魚姫に届いているのかもしれないな。
他の作品、「山の上の交響楽」が気になる。タルカス伝も。
(多分過去にどっかで「タルカスやんけ!」とか気になっていたような気がする。)
・奇跡の石/藤田雅矢
東欧の国にある小さな、超能力者の町を訪れた日本人と現地の少女達の物語。
どうにも不穏である。
予知は出来る人、結晶化出来る人はいる、しかしそれ以上はどうしようもなかったのかな。
そうやって生き延びてきたのか、この町の人達は。
・生まれくる者、死にゆく者/和田毅
少しずつ生まれ、少しずつ死んでゆく世界。
そんな世界でもじいちゃんは頑固だし短気である。
穏やかな世界だけど、じいちゃんと孫は出会えるのか・・・とはらはらする。
・G線上のアリア/高野史緒
中世/近世ヨーロッパに電話があれば、という話。
美しい。
ミケーレが回線に接続してからが美しいのだ。怖いくらい。
「G線上のアリア」はあのバッハの名曲なんだが、「そういう意味やったんか」と。面白い。
「カント・アンジェリコ」も読まねば。。。
・人生、信号待ち/小田雅久仁
信号待ちをしているうちに過ぎていく人生の話。
何を言っているんだと思われるかもしれないが、ほんとにそういう話。
これも家族愛の話なんかもしれん。
お互い悪い人じゃなかったようでよかったなぁ。そういう人の縁もあるのだ。
此の作者の「よぎりの船」が気になる。
・ムーンシャイン/円城塔
数字に纏わる共感覚、多重共感覚の話。
正直、訳がわからない。
読んでて本落っことしそうになったり気絶しそうになったり。
でも美しいのだ。其れだけは読めば解る。

掲載作以上に作者紹介にある作品が面白そう・・・うう、悩ましい。

どうでもいいニュース:
伴名さんの本棚どうなってるんやろ。
あと伴名さんをもってしてもBLSFアンソロジーは「日本SFの歴史には存在しませんが」なのか。
BLの世界掘っていくと、BLSFの短編がわんさか出てくるんかな。