社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽

伴名練がジャンプ本誌に現れて主な作品のファンに其れに見合った作家と作品をお勧めして去って行かはったそうだ。
飛さんを「猟奇芸術家」と形容されてて妙に納得した。
伴名さんが実はスパコンだったとしても驚かないと思う。
今迄お読みになった作品・論文は全て物理媒体とデータで持っておられて、外部接続した計算機(でいいのかな)ではネットにある数多の情報・呟きを瞬時に獲得して、今求められている作品を即座に出力・提示出来るシステム。
其れが実際には生身の人間なんですって・・・どうなんだろ。1人とは限らなかったりして?
自分は文章でしか存在を知らないので。

「日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽」(伴名練・編/ハヤカワ文庫JA)読んだ。

此のシリーズ、次は何編だろ?と思ってたら、作者別傑作選なのだそうだ。
sociologicls.hatenadiary.jp
此の↑時に読みたいなーってなってた「山の上の交響楽」が読めて嬉しい。
タルカス伝は外伝でちょっぴり雰囲気を。
ちゃんと此れ↓が脳内で動いてました。
タルカス
お目当ての「山の上の交響楽」がどったんばったんほのぼのしたいい話。美しい音楽。
音楽が奏でられる裏側のドラマ。
語られるのは其のほんの一部なんだろう。
数千年~1万年掛けて演奏されるのだから。
此の物語はそのうちの難所を演奏しようとする時の話である。
山頂交響楽を奏でる為に特化した一族があったり、「山頂交響楽を堪能しよう」というバスツアーがあって「私も楽団に参加したかったのよねー、事故で腕がダメになってしまって楽器辞めざるを得なかったのだけど」な人が観に来たり、当時なかった楽器を後後生まれた楽器で代用するか否かで揉めたり(因みに作中では山頂交響楽の為に楽器が作られるから結局代用はしないんだろう)・・・と勝手に想像したりして。
勿論そんな話ではない。
其の他不思議な話が多い。素敵トンチキな話も。何食べたらあんな発想出来はるんやろ。
難しく考えず、気楽に読んで楽しい!怖い!ってなれるのが良いな。
こういうご時勢だから、敢えて時代を感じずに小説を読む事を楽しめる作品が欲しかった、自分は。
なのでどストライクだった。
勿論深読みして考察する楽しみもある。
「山手線のあやとり娘」「例の席」のようなショートショートは読んでて「ほええ」ってなった。
もし最近話題のマイクロノベルをお書きになったら、どんなに面白い凄まじい作品になるのだろうか。

其の他面白かったやつ。
・暴走バス
暴走してないじゃん!と思ったが、運転手etc.の意志に沿わない挙動ってのは確かに暴走なのかもしんない。
辛いな、此れ。
最後の最後まで付き合うのも辛いし、途中で諦めるのも辛い。
此の後どうするんだろう。事故った後の始末どうなるのか。
・満員電車
ホラーなんですけど。
よく起こってる、だから先行の列車が遅れて自分の乗ってる電車も「急行じゃなくなっちゃう」のだろうか。
今東京の満員電車がどの位の混み具合なのかは知らないが、こういうのが実際に起こりそう・・・という怖さもあった。

しかし時代の所為で埋もれてしまうっての、切ない。。。
もしもうちょっと後の時代だったら、短編集が出てたんでしょう?
実際今は電書で読めるようだし。
雑誌自体が大切に残されるもの、と考えられていたんだろうか。

小説を書き続ける為に音楽の仕事してはってんね。