社会学的ラブソング・改

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平成怪奇小説傑作集3

阪神淡路大震災絡みの怪異話あんまりないの、語れるまでに余裕無かった、何より誰も当時聞かなかったから、てのもあるんじゃないかね?
「そういえば、」という話なら実は自分にもある。
一人にだけ話をした事がある。
一昨日思い出した。

「平成怪奇小説傑作集3」(東雅夫・編/創元推理文庫)読んだ。

平成怪奇小説傑作集3 (創元推理文庫)

平成怪奇小説傑作集3 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 文庫
平成最後の10年。
東日本大震災地震も台風も大雨も色々ありすぎた。
テクノロジーもどかーんと大きく変わったし、政治もなんだか酷い、SNSやネットを走り回る善意に悪意、訳が分からなさすぎて、その混沌を怪奇に固めて理由づけしたいのかもしれない(無理矢理)。

以下、軽くネタバレっぽいのあるかも。
気になる方は後日。

「傑作集1」とは違う”どんより”、「傑作集2」とは違う鮮やかさもあるのだけど、何処かに”落ち着く”感じがあるように思った。
怪奇が淡淡と存在するけれど、「実際どうだかわからないけれど、”これはこうなんだね”と考える事が出来るよね」「解らないし敢えて暈してる、でも物語の中で何処かに着地してるよね」という感じがした。
作品のテーマで問いかけるものはある、ただそれを「突きつける」感じがしない、ともいうか。
「深夜百太郎」のようにツイッターに掌編が発表される、というのもこの時代の特徴なのかな。
(脱線するがツイッター小説やLINEノベルみたく章立てよりもっと細かく区切って読む・・・みたいなスタイルも今後増えてくるのだろうか)
そんな時代に「修那羅」(諏訪哲史)や「江の島心中」(小島水青)のような小説もあって、「傑作集3」の中で隣り合わせになっているのが面白い。
「成人」(京極夏彦)、「さるの湯」(高橋克彦)、「雨の鈴」(小野不由美)が再読。もしかしたら「天神坂」(有栖川有栖)も読んでるかもしれない。
特に印象に残っている作品。
・成人(京極夏彦
「怪談実話系」で読んだ時にあまりピンと来なかったが、”実話怪談(風)”という枠から取り出して読むと、クる。
成れないんじゃなく人に成らない事で人間から吸い取って生きてんだろうか、と今更考える。
天神坂有栖川有栖
ふんわりとしている、でも「良かった」と思える。
はっきりしなくてもよい事もあるのだ。
アイデンティティ藤野可織
よくよく考えたら哀しい話である。自分のアイデンティティを奪われたり与えられたり。少なくとも自分では決めさせて貰えない。決めたのを否定される。
でも明るいんだよなぁ。
・鬼のうみたりければ(澤村伊智)
平成元年の出来事が平成30年に蘇る(?)話。
平成怪奇小説傑作集の最後を飾る為に書かれたんだろうか?と思ってしまった。

令和の怪奇小説傑作集はどうなるんだろう。
実話怪談だけで傑作集が出来そうだ。

ところでアンソロジストって凄い職業よなぁ。
確かに自ら作品を書くのではない、しかし膨大な量の作品を読んで理解してないと、バラエティ豊かな、時代もばらばらの作品を纏め上げて1つの本にする事が出来ない。
何かに特化するだけじゃダメだし、浅く広くでもダメで。
単行本未収録、何処かに埋もれてしまった作品を拾い上げて再び世に送る事も出来る。
このシリーズに収録される事で、過去に読んだ作品も違う角度から読む事が出来、全く知らなかった作家に興味を持つ事も出来て良かった。