社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

ゲームの王国

歯の定期健診に行ってきた。
椅子が倒れなくて電源入れ直したり先生呼んできたり、漸く倒れるようになったが「もし故障だったら・・・?」と気が気でなかった。
汚れ落としでガリガリやってる時にガターンってなったら怖いやん。
因みに後日先生に診ていただく事になった。2か月後、覚えてるだろうか。。。

「ゲームの王国」(小川哲/ハヤカワ文庫JA)読んだ。
[まとめ買い] ゲームの王国
やっと、である。
伊藤計劃トリビュート2」で読んで気になっていた、しかし手を出しかねていた。
(今思うと全くSFぽくないのにあのトリビュートで一番“伊藤計劃み”があるのが「ゲームの王国」だった気が)
カンボジアポル・ポトの隠し子ソリヤと貧村で天賦の”識(ヴィンニャン)”を持つムイタックの物語。
裏切ったの裏切られたのが、えぐい。
ネタバレあるかも。
あとがきがめたくそかっこよかった、途中で投げ出したくなったらあとがき読んでみて欲しい。
此の小説の圧、熱の理由が解る。



クメール・ルージュが政権取って大虐殺を繰り返していた時代。
人が嘘を吐いたか解る、初っ端から親代わりの人間がガンガンに殺されていくソリヤ。
長閑な暮らしの中では頭が良すぎて理解されない、叔父から色々学んだが時代の波に飲まれて周りの人間がガンガン殺されていくムイタック。
一度は出会ってゲームをし心が通じ合った仲である。
遊戯としてのゲームでもあるが、此の作品でのゲーム→生き抜く為の選択。
質問に対しどう答えを出すか。
どの選択肢を選んでも命は無い。
誰が味方で誰が裏切るか解らない。
ソリヤとムイタックが合流するかと思いきや、ムイタックが「君を殺す」と言う事態に。
・・・というのが上巻。

下巻は2000年以降、同じ小説とは思えないくらい、ガラッと雰囲気が変わる。
SFだったんだな、と思い出すのもここらへんから。
各節に人物・日時・場所が書かれており、沢山の人達の物語から全体の物語が紡がれているところは共通しているが。
ソリヤは養子リアスメイを迎えて”ゲームの王国”を作る為にCPO党首となり、最高権力を目指す。
ムイタックは神経医学の教授となり、脳波を使ったゲームを開発したアルン、リアスメイと共にP120という脳波振動を研究し、利用したゲームを作ろうとする。
脳波に反応して出てくる魔法で戦うゲーム、其れは感情や思い出、妄想によって反応する。
そして無かった筈の記憶が・・・!?
政治の腐ってるとこを追うCBCディレクターのカンがソリヤの不正を追う。
綺麗過ぎるからってほじくりに行くのも不自然ではないか?と思うが、或る種の変態だもんな・・・。
暗躍するラディーの辺りは前篇ぽさが残る。ていうか生きてたんかワレェ。
ソリヤ暗殺未遂の謎も気になるところである。
思わぬ所で色んな人が絡んでくるぞ。ヘモグロビンおじさん(医者)とか。
第7章まで読んで「え、ソリヤとムイタックで闘うんじゃないん?」と気になった。
最後やっと闘えたんだな。
なかなかに不思議な終わり方である。
一回読んだくらいじゃ理解させへんで、って感じの。
読み終わって色んな人の感想見たけど、的確なような、そうでもないような。。。
また読もう、とはいえ今はちょっとしんどい。

ゲームはルールが確乎とあるから、従うにしろ裏をかくにしろ動けるし、成立する。
だがルール自体、ルールの土台をひっくり返されたらもう成立しない。
政治とはそういう所で相容れないのかも。
相容れる事が出来るとしたら、余程高度というか「みんなきれい」じゃない、かつ「みんなきれい」を疑わない社会じゃないと無理なのかも。

でも何でまたカンボジアなん?
政治的な騙し騙されのどろんどろん、あと神経医学というテクノロジーと輪ゴムetc.の呪術っぽい要素が絶妙な物語を描くのによかったのだろうか。
カンボジアの事は殆ど知らないが、こんなに不正塗れだなんだと書かれて怒ってはらへんか、ちょっと心配。
ま、何処の国だって不正塗れなんだろうけど。

参考文献が掲載されているが、ゲーム哲学、脳波解析の本も知りたかったなー。