社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

象られた力

ぼんやりした状態が、名づけられる事で形を持つの、面白い。
現象学がそんな感じだが。
オルタナ」も「推し」も「萌え」も、人それぞれの”定義”があるもののその名称を”名乗る””名づける”事で形を持つ。
後から「オルタナって何だ・・・」「この界隈で”推し”と言うなんて」みたいにややこしくなるけれども。
個人的には「オルタナ」も「推し」も「萌え」も心の中の衝動に似たエモいモノで、経験・学習から”名づけ”られたんだろうな、便宜上って気がする。

「象られた力」(飛浩隆ハヤカワ文庫JA)読んだ。
どの物語も美しい。エモい。
残念ながら自分の持つ言葉では表現出来なかった。
飛さんのお書きになる物語を築いている言葉を脳内再生しないでそのままダイレクトに視覚(或いは聴覚)に突っ込んだら、こういう読後感になるんだろうか。
観る・聴く事で心を侵蝕する存在。怖い。でも魅惑的。

意味あるかわからんけど、1つ1つの物語についても感想を書く。

  • デュオ

この双子の鳴らす音、どんなんやろ。
勿論そういう話ではない。
”名なし”は双子の音から生まれた、姿を持ったんだと思うが、それが双子の音に良くも悪くも作用するとは、それが己の存在を脅かす事になるとは皮肉なもんだな。
下手すりゃ”名なし”すら存在出来なくなるだろうに。実際好意を持った人にトドメ刺されたようなもんだし。
(それでも誰か乗っ取るようにして生きていくのかもしれないが)
そういう物語じゃないんだろうけど、自分にはそんな風に読めた。

  • 呪界のほとり

一番とっつきやすいかも。
スケールでかい。

  • 夜と泥の

開拓する側がされる側を圧倒してしまう訳ではないのだ。
蔡くらい入れ込んでしまえば、幸せなのかもしれないな・・・”圧倒された”事に気づかない/気づかなかった事にして、幻を見続けられてるのかもなぁ。
それにしてもジェニファー・ホールも大変だな・・・地球を出られない娘を思って父がやった事の所為で、延々と繰り返させられてるんだ・・・。

  • 象られた力

文字・言葉のような文様の中にある”見えない図形”とは何か。
何かの“形”の記憶なのか、伝承なのか、“可能性”なのか・・・。
物語の代表として、”それ”を”観る”役割だから「ヒトミ」なのかな。
しかし何でこんなに拡がっていったのだろう。
星を越えて、人・モノの心を掴むくらい魅力的なのか、そうある事で全てを破壊したかったのか。
それは誰の意思なんだろうか。

どの話も、特に「デュオ」「象られた力」は読む毎に違う物語・世界・刺激が広げられていくんだろうな。
年一回くらいのペースで読み返したらどうなるだろう、読み手である自分の心。
物語に侵蝕されていくのだろうか。