社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

クォークビーストの歌

もし魔法が使えるなら、「アトピーの痒みを狙った奴に感じさせて黙らせる」魔法がいい。

クォークビーストの歌」(ジャスパー・フォード、訳:ないとうふみこ/竹書房文庫)読んだ。

「本が好き!」の献本に当選した分。
元元読んでみようと思っていたところである。やったー!
帯を見たら、自分が「基本読書」で知って面白そうやなーって思ってた作品と同じ作者だった。
(というか「最後の竜殺し」と関連があるようだ、でも此の1作単体でも思う存分楽しめる)
此れは期待出来る!
もっとSFっぽいファンタジーかと思っていたが、割とファンタジーが勝ってる。

以降、ネタバレあるよ。
ネタバレ気になる方はこちら御覧下さい。

魔力の衰えた世界だが、二か月前にビッグマジックという魔力の再興が起こった。
「わたしは魔法業界で働いている。華やかな仕事だと思うだろう。」(p.010)
はい・・・え、違うの?
科学と信念の融合したもの、魔力は目に見えない霧のように身の周りに渦巻いていて、魔術師は其れを重ね、呪文を唱え、集中させて使うらしい。
再興しつつはあるけれど、どでかい魔法を使う場合はかち合わないように根回しが要るし、普段は魔力が上昇するのを待ちながら、魔術師は配管・配線修理やピザ配達(魔法のじゅうたんで!)をしながら暮らしている。
実用的だが地味である。ちょっと生活が楽になる程度?
主人公・ジェニファーは魔術師ではなく、魔術師の面倒を見る魔法マネジメント。
そしてカザム魔法マネジメントの社長代理。
会社で橋の再建工事を請け負っていたのに、魔術の独占と金儲けを企むiマジックとの魔術合戦で橋の再建を行う事になってしまった。
カザム魔法マネジメント、ひいては魔法界の未来はどうなる!?
クォークビーストはどう絡んでくるのか?
社長は?見つかるのか?
てか、裏表紙の粗筋の

魔法を悪用する前にさあ……。
もっとやらなきゃいけないことがあるよね?

て、どゆこと?

メインとなるのが魔術合戦だけではないんである。
ギリギリ迄目が離せないんだ、魔術合戦迄辿り着けるのか・・・と。
iマジックの社長・魔術師のブリックスが小狡い小狡い。
国王とツーツーなので相手であるカザムへは魔術じゃなく物理的に妨害していく。
そういうのって、魔術の裏かいて魔術で封じちゃったりするんじゃないん。。。
だんだんカザムの稼働出来る魔術師が減ってくよう・・・
てな所で思わぬヤツが。
一瞬会えた社長からも良いアドバイスが。
此処らへんからが凄い、知恵と魔術で巻き返す。
実用的かつ地味な魔術も、だんだん魅力的に感じてくる。
・・・と更にどんでん返し。
魔術合戦の後もどったんばったん、益益目が離せない。
魔術合戦迄の細かい出来事の一つ一つが一気に炸裂して行くぜ!
読む手と目が止まらない!
予言もそう来たか!
こんなに見事な大団円もなかなか無いぞ。
一人ひとりがいいもんも悪いもんも魅力的なんだ、魔術師達は実際に自分の周りに居たら大変そうだけど、其の個性がめちゃくちゃ面白い。
魔術師はこうでなくっちゃ!
なんだかんだで一目置かれてるジェニファーも可愛いくて賢い、そんな彼女が「わたしより有能だろう」と最後に語るタイガーもなかなかである。

タイトルの「クォークビーストの歌」、ってそういう事か。
直接関係なさそうで、切実に関わってくる。
魔術保護官がクォークビーストを保護して大切に養っているのは悲しいクォークビーストの歌を歌わせない/聴かせない為なのか、或いは祈りなのか。
そんな彼女の過去も明らかに・・・ってええっ!
そういう意味でもクォークビーストは物語の根幹に絡んでくる、のかもしんない。

でも、もし此の物語がもう少し続くのなら、またブリックス復活しちゃうのかしらん。
其れは其れで楽しそうだ。
・・・とWikipedia見たらもうちょっと続きがありそう。楽しみ!

クォークビースト自体が気になるので、「最後の竜殺し」を読もうと思っている。

どうでもいいニュース:
名前が地味にひどい、「国王陛下の無能な弟」とか。
あと「アイ・アム・ユア・ファーザー」はわろた。