社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

さよならに取られた傷だらけ 不純文学

日曜の夜から「何て事を言ってしまったんだ!」「でも現実を認めたくないんだッ!」を繰り返してのたうち回っている(心の中で)。
平和な証拠ではある。

「さよならに取られた傷だらけ 不純文学」(斜線堂有紀/河出文庫)読んだ。

Twitter(今で言うところのX)に「文庫ページメーカー」を使って挙げられていた掌編小説集。
今でも掲載され続けているようなので「#不純文学」で検索してみそ。
どの作品も全て先輩と私を巡る物語。
ラブラブだったりすれ違ったり異世界だったり物騒だったり・・・だいたい物騒なような。
続いてそうな話もあれば、視点違いなのかな?な話もある。
「先輩と私」という共通点があるだけで、よく此処迄バラエティ豊かな物語が書かれるもんなんだな。
すごい。
”不純文学”だけど、充分、純だよ。
どの「私」も純だから、どうなろうと先輩の事が好きで、好き過ぎてさらっとしてたり狂ってたり。
「先輩」は「私」を様様にあしらいつつも振り回されつつも本を読んでいる。ああいうのも愛だ。
此処に書かれている沢山の愛が、如何にも「愛!」じゃないとこがまた好きだ。
そういえば「回樹」お書きになった方だった。
歪な愛を一つ一つ飴玉にしてねこ瓶に詰めて光に翳したら綺麗ねエッ!って感じの本だ。

其其の掌編は完結してるけど、此処からもっと広がりそうでもある。
不純文学で収まり切らずに違う短編、長編になった話もあるんだろうか。

あと”小説”として此の「文庫本1ページ分」が丁度良いのかもしれない。
「幸福はどこにでも」の「驚くことなかれ、」が活きる位の。
此れがもうちょっと短くなって百字小説やマイクロノベル位になると、”小説"とはまた違う種類の文学になっていくような気がする。

読んでいて好きだな、と思った掌編のタイトル挙げとく。
・惑うまで名無しの僕ら
・そこに愛が降る
・その歌が聞こえたら歩みを止める怪獣になりたい
・それではまた来世
・そこに在ったが百年目
・縄を解けば糸になる
・破線通信
・やるならどうぞ天井まで
・「先輩、私のミルクティー飲んだでしょう」
・「この店のケーキが一番好きなんですよ」
・正直者の指たち
御覧の通り、タイトルがまた良いんだよなぁ。