社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

岩橋邦枝の誹風柳多留

サラリーマン川柳」が「サラっと一句!わたしの川柳コンクール」になるんだそうで。
名前変えりゃいいってもんでもないような。
選ばれる句の多様性の方が大事だと思う。

「わたしの古典 岩橋邦枝の誹風柳多留」(岩橋邦枝/集英社文庫)読んだ。

川柳集「誹風柳多留」から岩橋さんの解説と共に抜粋された本。
此れは大学の頃、川柳の授業で褒められて 調子に乗ってる時に買ったね?
巻末の解説含め、読んでいくと川柳って何じゃろ?というのが解る。
元元は連歌の付合の練習の為に生まれた前句付、前句付の点者(選者)柄井川柳が選んだ句集、更に呉陵軒可有が精選した句集、其れが「誹風柳多留」なのだそうだ。
「運のよいこと運のよいこと」みたいな前句があったけど、其れを取っ払って5・7・5の形式で収録されている。
所所「こんな前句があった」というのも紹介されているが、前句があるのと無いのとで印象が変わってて、なかなかに面白い。
匿名で投句出来た、そして賞品貰えるという事で男性だけじゃなく女性も、武士も町人も参加してたのでは?という話。
そういう背景なんで、遊戯的精神の余裕を保つ。
体制批判までいかない安全な範囲で、封建社会体制下の息抜きとして愛好されていた、ともある。
有名な「役人の子はにぎにぎをよくおぼえ」は板木から削除したり差し替えたりしたらしい。
其の儘でも面白いがベースとなる文化・歴史的知識があると一層面白い。
(現代の我我向けには解説があるので安心)
一般の人も其れなりに和歌・古典の知識があって、句を作る人も読む人も其の上で楽しんでる、知らなくても其れなりに楽しんでるって、よく考えたら凄い事なんじゃ。
御隠居さんが「此れは芭蕉の句のパロディでな」って八つあぁんに説明して、八つあぁんが其処で芭蕉の俳句を知る、或いは「其れ、此の前落語で聴きましたわ」みたいな事もあったんかも。
「風呂敷をとくと駆け出すまくわうり」がなんか可愛い。
目の付け所、観察力がすごい。
「愛想のよいを惚れられたと思ひ」、最近ちょいちょい見る「店員が普通に優しく接客したら『気がある』と勘違いしてとんでもない行動する」みたいなやつか。
ああいうの、江戸時代からあったのか。

第四章 日常生活が面白かった。
当時の文化を知る事が出来るし、文化は違っても庶民の暮らしって案外変わらんのかもなーって思ったり。

”うがち”ばっかり追求し過ぎて「皮肉ったったwww」「うまい事言うたったwww」みたいなノリが川柳ちゃうねんぞ、と。