社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

震災後の不思議な話

「震災後の不思議な話」(宇田川啓介/飛鳥新社)読んだ。

ジュンク堂の1.17→3.11なフェア(タイトル忘れた)で見かけた。
此のテの本は幾つか読んでいる。
sociologicls.hatenadiary.jp
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此の本は妙に煽る事もなく穏やかに怪異が語られ、考察されている。
其のスジの人じゃないしな。(一方で此の著者の著書一覧を見ると此の一冊が異質な感じである。。。)
神話や言い伝え、民話を引きつつ、著者が見て、聞いてこられた”不思議な話”が語られている。
本当に色々ある。
ガチ勢的にはツッコミ入るんだろうけど、そういう視点での考察が興味深かった。
良い本だと思う、ただ被災された方、当時のニュースを観てショックを受けた方にはしんどいかも。

言い伝えで助かったという話が多いが、「言い伝えと違っていた」という話も。
其れだけ東日本大震災の時の津波が大きかった、大きすぎるくらいだったのでは、と思った。
津波供養塔やお地蔵さまに何となく目が向く、という形で何かを教えてくださる、という事もあったそうだ。
虫の知らせはあるだろうし、一方で「虫の知らせだった」と解釈したい、という気持ちもあるだろう。
長く住んでおられた方が散らばらざるを得なかった、其の事で”伝わるべき事”が伝わらなくなってしまって”引き継がれるべき事”が引き継がれないまま、其れが復興に影響しているのかもしれない。
そういうのは神様にもどうしようもなかったんだろうか。
其処は今迄守ってきた人間が何とか頑張りなさいって事なのだろうか。

タクシーに纏わる話は、此の本でも紹介されていた。
歩いて帰るのも大変なんだろうなぁ、かと言って鉄道・バスがないならタクシーなのかと思ったが、「気づかれるのが大事」との事。
なるほど。

震災が生み出した沢山の”不安定な状態”があったから霊障が出やすくなった・・・という話。
混乱していた、というか被災した人も助ける人もボランティアの人も、色んな立場の人が色んな感情を抱えて現地にいらっしゃるのだから、神様だって幽霊と呼ばれる存在になった方だって其の辺に居てはっても道理なような気がする。
「境界が崩れた」のなら、普通に存在しはるし、助けて欲しくて「助けて」って他の人、存在に訴えかけはるやろし。
亡くなった方も故郷・・・”帰る場所”の復興、気にしてはるんやね。
”不安定な状態”から”帰る”事で安定しはりたいのかもしれない。
其れだけ一瞬の出来事だった、という事なのか。ご自身がどうなってしまったのかも解らない位。
亡くなった方が生き残った方に”後の事を託す”、という考察もあるのだな。

怪異譚自体についても考えさせられる。
実際に”存在”してはってもおかしくはない、そして”存在”するかどうかとは別で”怪異譚”として”気持ちの落とし所”を設ける。
東北の文化が~というだけじゃなく、其れだけ甚大な被害だったという事なのかもしれない。
あまりに酷すぎて、受け止める器が人間の脳じゃ足りない。
よく語られているのは、メディアの変化もあるのかもな。
聞いて書こうって人も多かったろうし、”伝える”手段が昔より沢山ある。

オシラサマは幣束さんが話してはりましたな。
此の本では具体的な地名は挙げておられない(全て敢えて地名は挙げずに○県のこういう地形の所、というような説明になっている)が、陸前高田にたくさんいらっしゃったそうだ。
其れが流されてしまったのでは、との話。