社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

悪の五輪

ロックスターが流行りのアレ感染してたそうで。
あまり症状出なくて、出ても熱が出てしんどいなーで済みますように。
後遺症残りませんように。
いよいよ迫ってきた感があってどんよりしている。
レルレ氏も比較的近くでの話だから色々考え直しはったらなぁ・・・と少し思ったのだが「マスクしてても気をつけていても感染するから無駄」と仰る可能性もあるのかと更にどんよりしている。

「悪の五輪」(月村良衛/講談社文庫)読んだ。

1964年の東京オリンピック、其の記録映画の監督を黒澤明が降りた所から始まる。
後任をやりたがっている映画監督・錦田を押し込むべく、あわよくば東京オリンピックの恩恵に与ってやろう・・・とヤクザ屋さんが頑張る話である。
主人公は映画好きの人見稀郎。映画がきっかけで白壁一家の先代に拾われた。
稀郎が「オリンピックを虚仮にしてやろう」と嗤い乍ら映画への情熱を燃やしつつ錦田にキャリアを積ませ裏から手を回して委員会に選ばせようとする。
こんな悪塗れ利権塗れな小説を2021年の東京オリンピック真っ最中に読んだらさぞかし面白かろうなのだ!
と思ったのだが・・・。
今のオリンピックが悪っつうかバカ過ぎて。
まだ戦後、高度成長期を迎えてガンガンいったろやんけ!という勢いがあった時代を描いた此の作品の方が美しいとすら思ってしまう。
「覇権取ったろやないか!」「銭やゼニ!」という勢いが無い、ただぬるぬるとどこぞのお偉方だけが肥えてるだけである。
悪の美学っつうもんも無いんだ。
そりゃ小説の方が美しいだろうよ、書くのが月村さんだし。

で、政財界のお歴歴がどす黒く散散利権巡って殴り合い利用し合って、持ち上げる時はイケイケドンドンで持ち上げて風向き変わったらポイ、散散裏で手を回しておいたというのに駒みたいな奴がやらかして終了ー。
セクハラパワハラはいけませんね。
・・・というのも変わらんという。
前の東京オリンピックの栄光を再び!なんだとしてもさ、アップデートすべきとこはアップデートすべきだったんじゃないん。
「オリンピックってのはそんなに御大層なもんなのかい。オリンピックとお題目みてえに唱えるたけで、なんでもかんでも許されるもんなのかい。」(p.131)
ってめっちゃ心に刺さってるんだけど、違う刺さり方したかった。
オリンピックの押し売り、バカ騒ぎって当時もそうだったんでしょうなぁ。
「これからの日本はよくなるんでしょうかね。それとも悪くなるんでしょうかね」と問われるシーンがあるが、「よくなるに決まってるじゃねえか。オリンピックだってあるんだぜ」(p.254)とはならなさそうな気がする、今は。残念な事に。
ラストの若松の件は今だったら炎上するんやろな。。。

そーやって今リアルタイムで起こってるオリンピックの彼是ごちゃまぜにして読む自分が悪いのですが。

主要人物も容赦なくあっけなく死ぬ、去るのが月村さんだなぁ、と思った。
ドンパチは派手ではないが、「えぇ其処でそうなるん」「そっちと手ェ組むんかい」というのは目が離せない。

SFに限らず作家さんがやりづらい時代だとつくづく思う。
もうちょっと時間が経てばネタになるんだろうけども。