社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

月まで三キロ

ブログもSNSも長く続けてると「あの人元気だろうか
」とふと思う時がある。
トラブルや病気が無く、生身生活が充実してる、単になんも書いてないだけなら良いのだが。
「もしかしてあの時のホニャララさんが今のホニャーさん!?」なんてのもあったりして。
だから怖いけど面白いのだ。

「月まで三キロ」(伊与原新/新潮文庫)読んだ。

SF的な話を想像していた(何故に)。
ファンタジーではなくて現実。
胸が少し痛くて、うんと優しい。
ドラマなんですよ。
巻末の対談によると、伊与原さんはずっと理工系の論文を書いておられたとの事、其の中で「意味が一つにとれるように」書いておられたそうだ。
万人にわかるように書く。
ふんわりしつつも情景がしっかりはっきり浮かんでくるのは、読者が誰でも”作者の描きたかったもの”を思い浮かべられるようブレないよう書かれてるからなのかもしれない。
「星六花」の主人公がどんな人なのか、顔や服等は読者に委ねられている、でもどんな考え方をする人でどんな風に生きてきたかは作者の意図がそのまま脳内に浮かび上がるのだ。

気になった話等。
・星六花
ええなぁ。
惚れたの腫れたの、ではない恋愛の物語。こういう恋愛もいい、というかこういう恋愛がいい。
作中に登場する”首都圏雪結晶プロジェクト”は実在して、冬になればTLに其の話題が流れてくる。
プロジェクトの陰で、色んな愛の物語があるのかもしんない。
天王寺ハイエイタス
ハイエイタスと言えば細美のみーちゃん、でもどちらかというとthe LOW-ATUSな感じの話。
ブルースギタリストだったらしい厄介者の叔父とバンドマンだったのを諦めて家業を継ごうとしている甥の話である。
叔父さんはギタリストを辞めるにあたり音楽に関する物を少しずつ捨てていった・・・んだが、其の話に至る迄も謎めいてるし、主人公の兄の「ハイエイタスやな」も気になる。ハイエイタスとは。何故ハイエイタスなのか。
此れだけゆるうっとぬるうっとしてる、でも一番好きだ。
此れ読む為に「月まで三キロ」をSFと勘違いしたんやろか、と思った位。
いいブルースやで。
・エイリアンの食堂
人類へのラブな物語。
男手一つで娘を育てるお父さんのやっている食堂に現れるプレアさんと、その娘・鈴花の話。
段段話のスケールが大きくなってくる。小さくて大きい。
鈴花も素粒子、宇宙を追っかけていくようになるのかな、と思いながら読んだ。
・山を刻む
いい話・・・だけど、此処からがすっげーめんどくせえぞ此の家族、って読後どんよりきた。
けど最後に打ち明けて「其れが母さんの決断なら」って受け入れられてめでたしめでたし、じゃないのが良かったのかもな。
とはいえ本編ラストに読みたい話ではなかったな・・・文庫版の特別掌編が山の話だから?
そういう意味で気になった話である。

どうでもいいニュース:
「山を刻む」に新田次郎の「強力伝」読め、と出てきて気になっていたら巻末の新潮文庫紹介(新刊・話題書のとこ)にあった。