社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

ラピスラズリ

本来の仕事納めは来週月曜だが、今日で納めてきた。
業務の都合上、1日だけ出勤して長期休暇突入となってもなーんも出来ない。
職場も年末年始は有給取得を奨励している。
年始もゆっくりスタートの予定。
ラピスラズリ」(山尾悠子ちくま文庫)読んだ。

ラピスラズリ (ちくま文庫)

ラピスラズリ (ちくま文庫)

5つの短編が収録されている。
表題作は「青金石」だが、「竈の秋」が全体の半分くらいのボリュームなんだろうか、中心となる話のように思えた。
「銅板」は「画題(タイトル)をお知りになりたくはありませんか?」と三枚組の腐食銅版画が登場するが、この絵は「閑日」「竈の秋」を描いたものなのか。
逆に絵からこれらの物語が描かれたのか。
どちらでも良いが「この絵にはこんな話があってね・・・うふふ」って短編集の中が流れているような気がする。

「閑日」「竈の秋」は、冬の間眠り続ける”冬眠者”と冬眠者の館の使用人、ゴーストの話。
「閑日」は一人だけ眠りから目覚めた少女とゴーストの物語、「竈の秋」は眠る為の建物を開き、必要な品を運び込み、支度をする使用人と冬眠者、館を訪れる者、ゴーストの物語。
冬眠者にとって、身辺の雑用をする以外でも、使用人が必要なようである。
くるくるふわふわと視点が変わる。
匂わされる不穏。
・・・というのも、読む人によって全然違うのかもなぁ。
それこそ細かい線を重ねて描かれた腐食銅版画を観るように、絵の細かい細かいところを追っていってもよいし、其其の物語の繋がりを想像していってもよい。
休日に二度寝&寝坊した時、二度目に見る夢にも似ている。
何でか知らんけど、重たくて映画か小説みたいな感じの夢なん。
見た時の感覚だけ頭に残っているが、もし其れを書き留める事が出来たら、こんな感じなんやろな、と。

「トビアス」の冒頭が岡山っぽいと思ったら、山尾さんは岡山の方だった。
決して岡山であると明示はされていない、ただ描かれる景色が、自分の見た岡山の断片に似ているのだ。
うんと未来のような、少し昔のような。不思議な感じである。

物語を追ったり文章自体を楽しんだりするのみならず、文章を読んだ時に立ち上ってくる映像みたいな感覚(視覚以外の感覚も喚起されるので)を楽しむ小説なんだな。
特に「青金石」。