社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

約束された移動

腕の筋肉痛は点温膏で楽になったが、編み物を長時間出来ないのが少々辛い。
都合で引き締め気味に編んでる所為もあるが。

「約束された移動」(小川洋子河出書房新社)読んだ。

約束された移動

約束された移動

  • 作者:小川洋子
  • 発売日: 2019/11/12
  • メディア: 単行本
6つの、遠くて近い、遠いのに近い二者の物語。
表題作が面白かった。
ホテルのロイヤルスイートにある千冊を超える本が”お行儀よく出番を待っていた”書棚を巡る物語。
宿泊するハリウッド俳優はその度に1冊ずつ持っていく(泊まる度に1冊ずつ消える)、主人公(語り手)はどの本が消えたか気づく。
俳優の”メッセージ”に気づくのは主人公だけ。何を”読み取った”のか知っているのも主人公だけ・・・のような気がする。
「約束された移動」で読めるのはその主人公だけの”秘密”なんじゃないか。具体的に何があったかは知らなくてよいのだ。
「ダイアナとバーバラ」も好き。
ダイアナ妃の洋服を自ら作るバーバラとその孫の話。
日曜日には作った服を着て、バーバラは孫とショッピングモールに出かける。
その服の出来は読んでいて辛くなる。すれ違う人達の反応で解る。
(孫の母、即ちバーバラの息子の嫁が別れたん解る気がするわ・・・)
でも孫は平気。
此処にもバーバラと孫だけの”秘密”があるような気がした。誰にも理解されないけど、二人には理解されていて、それで十分だという事。

という感じで、”移動”をテーマにしたようで、裏テーマは”秘密”なのでは、という短編集だった。

文章の強度。強さ。
仰々しくないのに、世界が動いている。
一方でとんでもないのに、それが”ふつう”として描かれている。
これよ。