社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

文庫版 ヒトごろし

目覚めは爽やかだが眠い。

「文庫版 ヒトごろし」(上)(下)(京極夏彦新潮文庫)読んだ。

文庫版 ヒトごろし(上) (新潮文庫)

文庫版 ヒトごろし(上) (新潮文庫)

文庫版 ヒトごろし(下) (新潮文庫)

文庫版 ヒトごろし(下) (新潮文庫)

新選組土方歳三の物語。
初っ端から女の首を絞めようとしているが、彼は殺したいのではない、”斬りたい”のである。美しく斬りたい。
斬っても武士であれば咎められない、その為に近藤勇を担ぎ上げて浪士組に入り、新選組を作る。そして斬る。
それだけの為に此処までやるんかと。
わたしにはわからない正義。
殺る為の策略が見事・・・新選組の残酷さ、狂い方ってのは土方の其れなのかも。
他の登場人物もイカれてる。
沖田総司は斬りたいというより殺したいし(快楽的で土方と似てるようで全然違う、土方はそんな沖田が厭)、佐々木只三郎は自ら手に掛けるのではなく殺させる。
山崎丞は新選組やその周辺をよーーーく観てる。怖いくらい観てる。
自分は人外だが、戦争(いくさ)によって人間が人外に落ちてくるのは厭う。

せやけど榎本には激おこ。
人外の方がマトモである。
斬りたいが為に新選組も近藤も山崎も何なら沖田も利用していくしガンガン斬り殺していくのに、「兵隊はな、死んじゃ駄目なんだ」と言う。
武士道なんてしゃらくせえ、から武士道を利用して斬る理由を作り他の隊員を使っていくようになったが、段段時代の流れっつうもんを見て武士道なんて時代遅れ、くだらねえってなっていったんだろう。
それにしてもこの榎本達無能よな・・・もう近藤みたいに担ぎ上げて利用する気力も失せたんだろ。

異質なんだが京極節は健在である。
章の頭に点を描き、そこから線、面、空間、時間と拡げていくとこ、土方の内面のややこしいとこ、緩急。
狂ってるんだけど、土方が斬るとすーっとするとこ。
他の作品に登場する人物もちらほら。
土方に斬られたくて和泉守兼定を渡すお涼、「ヒトでなし」坊主の了湛。
勝海舟もそういえばそうなのか。
「死ねばいいのに」も河童も出てきますな。
もしかしたらこの物語の裏側で又市一味が暗躍してたんかも、とすら思う。

ところで此れも週刊新潮連載なんだったっけ。。。敢えて其の先は言うまい。

どうでもいいニュース:
folcaの物販のおむすびポーチにこの上下巻がまるっと入る。収納力すごーい!
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何なら「今昔百鬼拾遺-月 文庫版」も入りそうだったんで代わりにくだけねこを入れてみた。