社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

かめくん

「かめくん」(北野勇作河出文庫)読んだ。

かめくん (河出文庫)

かめくん (河出文庫)

かめくんは、ほんもののカメではない。模造亀(レプリカメ)。
倉庫の特殊な仕事をしながら、アパートで暮らしている。
パンの耳やりんごが好きで、図書館にも通う。研究の手伝いもする。
勤め先が吸収合併されてクビになるので独身寮を追い出されるが、かめくんに良くしてくれる社員さんは「正社員のうちに引っ越せ」とアドバイスするし、自分で大家さんと賃貸契約するし、自分で仕事も探す。図書館の人はお手伝いのお礼に図書館カードを作ってくれる。
そうやって人間の生活に馴染んでるけど、未成年は容赦ない。
この世界は大人になるにつれて、模造亀について慣れていくのだろうか。
特にそんな悲しい記述は無い筈なのに、寂しくて物悲しくて泣きそうになる。
何でだろう。
ただ暮らしてるだけなのに、木星戦争が影を落としてくるからだろうか。
かめくんは仕事したり本や映像に触れたりして経験を重ねていくが、それが長く続かないというのがそこはかとなく見えているからだろうか。

もしかしたら木星戦争も実はこの後の壮大な物語の前振りでしかない?
でもこのひっそりしたスケールが良いのだ。
また何処かで、かめくんの物語が始まるのだろう。

どうでもいいニュース:
河出文庫版のあとがきとして「おまけえほん かめくんのこうら」があるが、最後「(えはじぶんでかいてください)」にわろた。