社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

夜行

報道が無いのは被害が少ないからか、酷すぎてそれどころじゃないのか。
静岡の友人は大丈夫そうで安心した。

「夜行」(森見登美彦小学館文庫)読んだ。

夜行 (小学館文庫)

夜行 (小学館文庫)

以下ネタバレあるかもよ。





英会話スクールに通う仲間で連れ立って鞍馬の火祭を見に行った夜、長谷川さんが姿を消した。
10年後、その仲間でまた火祭を見に行こう・・・という話。
彼らは其其、岸田道生の「夜行」という連作絵画を目にしている。「夜行」には地名が1つ1つつけられている。
そして岸田道生には「曙光」という、「夜行」と対になった連作絵画がある、と言われているが、果たして。
語られていくのは、仲間達の思い出。5年前から1年ずつ。
思い出話の中に、「夜行」がどんな絵なのか、そして長谷川さんとの思い出話が現れる。
それは怪談・・・なのか。あらすじには”怪談”とあるけど。
どの話も、どうにもすっきりしない。水彩絵の具で引いた線が少しずつ薄くなって最後にすうっと消えていくような。
それが好い。何が起こってどうなったのかは、読み手が其其考えたらよろしい。
天竜峡」が一番好きだ。
その”すうっと”具合が一番綺麗。描かれる物語も美しい。

で、其れらの話が収束するのが「鞍馬」。
姿を消した長谷川さんがどうなったのか、主人公かな?と思ってた大橋君がどうなるのか。
謎めいてるけど、ミステリではないのだった。
「夜行」「曙光」其其で幸せであればよい。
こういう怖さもあるのだな、と。

自分が買った「夜行」には「天竜峡」のメッセージカードが付いていた。
一番好きな話、だから“当たり”だ。