社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC

「天冥の標を最後まで読む」を今年の目標にしようか。
物理的には全部あるんだ。積読の半分が「天冥の標」。

「天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC」(小川一水ハヤカワ文庫JA)読んだ。

天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC

天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC

此処らで漸くⅠと繋がってきた。
読むの辛い、しんどいので割とだばだば読んでた。
ネタバレあり。




前巻までで”冥王斑”ばらまかれて停止、だったが生き延びた人々のうち子供達が地下のブラックチャンバーに避難し、其処で新しい社会を作って行く・・・のだが。
上手く行きませんわなぁ。親と離れるしお腹空くし我が我がになるし。
統率を取る為にある程度システマティックにならざるを得ない・・・が専制政治とは皮肉なもんだ。
”歴史の書き換え”とかね。
こんな状況、知ってしまったら恐怖で混乱する、嘘のハッピーな物語でも用意しないと収拾つかない。。。
ユレイン三世がだんまり決め込んで専制してたのも致し方ない。
・・・って、”解ってる”から言える訳で、民衆はたまったもんじゃないよなぁ。
実はサンドラが冥王斑持ってて、今迄に想定していなかった形で一気に感染、辛うじて一部のメンバーがシェパード号で脱出してハーブCへ・・・なんだと思ってた。
まさかなぁ。
Ⅰでシェパード号から電気引っ張ってきてるの何で?他に電気発生する装置作らんの?と思ってたが、理由が解った。
てか、よく持ち堪えたと思う。

それにしてもアイネイア酷い。こればっかりは「致し方ない」ではない。
そしてメララの歌が哀しい。

ところで、「天冥の標」シリーズの章の振り方が気になってきた。
プロローグが無くてエピローグがあるとか、断章のナンバリングとか。

虚構推理

「虚構推理」(城平京講談社タイガ文庫)読んだ。
ネタバレあるよ。

虚構推理 (講談社タイガ)

虚構推理 (講談社タイガ)





妖怪の”知恵の神”となった岩永琴子、人魚とくだんの肉を食べて不死身になった桜川九郎、九郎の元恋人で警察官の弓原紗季が、不慮の死を遂げた後鉄骨を手に人間を襲うアイドル(巨乳)”鋼人七瀬”を何とかしに行く物語である。
残念ながら鋼人七瀬は実在している。してしまっている。
人々が鋼人七瀬の存在を信じて色々想像しちゃうからだ。まとめサイトに情報が集まっている。
存在を信じてあれこれ妄想しなくなれば消滅する。
その為に「鋼人七瀬の正体はこうだ!」という”虚構”を用いて解決を導く。
九郎はただ不死身なのではなく、死にかける事で幾つかの”起こりうる未来”のうちの1つを選び取る事が出来る。
さてどんな”虚構”を用いるのか?
・・・ってつらつら書いてるが、その発想が面白くて。
“虚構”で後の“虚構”パワーを強める、という技に「なるほど!」となった。
文章はちょっとまどろっこしい。そこがまたリアルな感じがする。

もしかして長文デムパ書き込みも六花みたいな事を狙ってる?
とか言うてたら、実体化するのか。。。

チグリスとユーフラテス

チグリスとユーフラテス」(新井素子集英社文庫)読んだ。

チグリスとユーフラテス(集英社文庫) 上下巻セット

チグリスとユーフラテス(集英社文庫) 上下巻セット

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • メディア: セット買い
文庫版出た2002年に読んで、実家帰った時にもう一度読みたくなって持って帰ってきたのだった。
遠い未来、惑星ナイン”最後の子供”ルナがコールド・スリープについていた人々を遡るように起こしていく話。
最初の3人は起こされた人、最後の1人”レイディ・アカリ”についてはアカリとルナ2人が語ってゆく。
地球から惑星ナインに移住してきた人類、一時期は繁栄したけれど子供が産まれなくなって衰退していく。
最初に起こされたマリア・Dはルナの母イヴ・Eを知っており・・・というか知らざるを得ない、子供が産まれる事が貴重すぎて妊娠記者会見が行われる時代。
2番目に起こされたダイアナ・B・ナインはナインの人口が爆発的に増えた時代。
3番目に関口朋実はナイン社会に特権階級が出来た時代。
最後に起こされたレイディ・アカリは地球での問題を抱えつつ移民として惑星ナインを開拓しようとした時代。
ルナに起こされた人の手記(?)によって、惑星ナインの各時代に何があったのかを知る事となる。
そして彼女たちは其其の時代の象徴でもある。
生きるとは・・・という物語なんだろう、これ。
マリアは我が子を産む事を望みすぎて”子供を産む”為に生きている。
ダイアナは惑星ナインの制度を維持する為に生きている。
朋実は”描く”、己の欲するままに生きている。
アカリはルナの「何故イヴ・ママは自分を産んだのか?」という問いに答える代わりに”ナインの母”という役割を授けようとする。
ラストはちょっと切ない、他に何とかならなかったのだろうか?と思っていた。けどこれが最適解だったのかもしれない。
人類ではないけれど、惑星ナインに届けられた命は、続いていくのだ。

すっかり忘れてたけど、アキラ酷い事してんだな。
穂高灯という人は何かの技術に特化した人ではない、”普通の人”だけど"人柄”という強い、他のメンバーを支えるモノを持っている。
永遠の存在にしちゃいたかったのかもしれないが。
尊い、偉大な存在として眠り続けたまま死んで愛する人の元に行けない、そんな大きなモン背負わすたぁ、ねぇ。ひどいや。
そういう人だからこそ”レイディ・アカリ”として人の心を纏める事が出来た訳だけど。ウムウ。

今読み返すと「順番、順番一個ずつ」が出てきますな。
「やおよろずの神様承ります」に”順番順番いっこっつ”の神様が出てくるの思い出して、ふふっ、てなった。

どうでもいいニュース:
Wikipediaが雑すぎる。

平成怪奇小説傑作集3

阪神淡路大震災絡みの怪異話あんまりないの、語れるまでに余裕無かった、何より誰も当時聞かなかったから、てのもあるんじゃないかね?
「そういえば、」という話なら実は自分にもある。
一人にだけ話をした事がある。
一昨日思い出した。

「平成怪奇小説傑作集3」(東雅夫・編/創元推理文庫)読んだ。

平成怪奇小説傑作集3 (創元推理文庫)

平成怪奇小説傑作集3 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 文庫
平成最後の10年。
東日本大震災地震も台風も大雨も色々ありすぎた。
テクノロジーもどかーんと大きく変わったし、政治もなんだか酷い、SNSやネットを走り回る善意に悪意、訳が分からなさすぎて、その混沌を怪奇に固めて理由づけしたいのかもしれない(無理矢理)。

以下、軽くネタバレっぽいのあるかも。
気になる方は後日。

「傑作集1」とは違う”どんより”、「傑作集2」とは違う鮮やかさもあるのだけど、何処かに”落ち着く”感じがあるように思った。
怪奇が淡淡と存在するけれど、「実際どうだかわからないけれど、”これはこうなんだね”と考える事が出来るよね」「解らないし敢えて暈してる、でも物語の中で何処かに着地してるよね」という感じがした。
作品のテーマで問いかけるものはある、ただそれを「突きつける」感じがしない、ともいうか。
「深夜百太郎」のようにツイッターに掌編が発表される、というのもこの時代の特徴なのかな。
(脱線するがツイッター小説やLINEノベルみたく章立てよりもっと細かく区切って読む・・・みたいなスタイルも今後増えてくるのだろうか)
そんな時代に「修那羅」(諏訪哲史)や「江の島心中」(小島水青)のような小説もあって、「傑作集3」の中で隣り合わせになっているのが面白い。
「成人」(京極夏彦)、「さるの湯」(高橋克彦)、「雨の鈴」(小野不由美)が再読。もしかしたら「天神坂」(有栖川有栖)も読んでるかもしれない。
特に印象に残っている作品。
・成人(京極夏彦
「怪談実話系」で読んだ時にあまりピンと来なかったが、”実話怪談(風)”という枠から取り出して読むと、クる。
成れないんじゃなく人に成らない事で人間から吸い取って生きてんだろうか、と今更考える。
天神坂有栖川有栖
ふんわりとしている、でも「良かった」と思える。
はっきりしなくてもよい事もあるのだ。
アイデンティティ藤野可織
よくよく考えたら哀しい話である。自分のアイデンティティを奪われたり与えられたり。少なくとも自分では決めさせて貰えない。決めたのを否定される。
でも明るいんだよなぁ。
・鬼のうみたりければ(澤村伊智)
平成元年の出来事が平成30年に蘇る(?)話。
平成怪奇小説傑作集の最後を飾る為に書かれたんだろうか?と思ってしまった。

令和の怪奇小説傑作集はどうなるんだろう。
実話怪談だけで傑作集が出来そうだ。

ところでアンソロジストって凄い職業よなぁ。
確かに自ら作品を書くのではない、しかし膨大な量の作品を読んで理解してないと、バラエティ豊かな、時代もばらばらの作品を纏め上げて1つの本にする事が出来ない。
何かに特化するだけじゃダメだし、浅く広くでもダメで。
単行本未収録、何処かに埋もれてしまった作品を拾い上げて再び世に送る事も出来る。
このシリーズに収録される事で、過去に読んだ作品も違う角度から読む事が出来、全く知らなかった作家に興味を持つ事も出来て良かった。

平成怪奇小説傑作集2

滋賀の湖中大鳥居がインスタ映えしてあほほど人が道渡るから横断歩道と信号作れ、てなニュース見たが、あれは加門さん的にどうなんだろう?
少なくとも「道(参道?)があって階段があれば渡ってしまうもの、下りてしまうもの、だから何とかしろ」って論調は「財布見えてたら取る」「スカート捲れてたらパンツ見る」って言うのと大差ないような。。。

「平成怪奇小説傑作集2」(東雅夫・編/創元推理文庫)読んだ。

平成怪奇小説傑作集2 (創元推理文庫)

平成怪奇小説傑作集2 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫
平成の真ん中の10年。
ノストラダムスの大予言はどっか行ったけどマヤ暦がどうとかあったような。あと2001年にアメリ同時多発テロ
何だかんだで不安はある。
個人的にはばりばり仕事して経験積ませて貰って嬉しい事も悲しい事も沢山あってメンタル病んでやっと心療内科行けた時期である。
本を沢山買えて、読めた。
お昼休みに職場からちょっと離れたとこにある紀伊國屋書店に走って「新耳袋」等ちょこちょこと買ってampmでお昼ご飯買って帰るのが楽しかった。
あとTHE BACK HORNに出会って世界が変わった。人生も趣味も、恐らく人間性も。文字通り変わったのだ。
収録されてる中で「海馬」(川上弘美)、「トカビの夜」(朱川湊人)、「水神」(森見登美彦)、「六山の夜」(綾辻行人)、「軍馬の帰還」(勝山海百合)、「芙蓉蟹」(田辺青蛙)、「鳥とファフロッキーズ現象について」(山白朝子)は読んでいた。
「海馬」以外はほぼ忘れているので、読み終わってから「そういえば!」となった。
因みに「海馬」は川上さんの作品で一番好きなやつなので、傑作集に収録されてて嬉しい。

以下、軽くネタバレあり。
気になる方は後日。

なんかグロくなってきた。
1の時みたいなどんより感もあるけど、スプラッタアな作品が増えてきたようなのは気のせいだろうか。偶偶?
バラエティ豊かになった、鮮やかだったり淡淡としてたりする。
特に印象に残っている作品。
・一文物語集/飯田茂実
ロマンがある。
こんな感じのツイッター1つ分の怪談募集してたけど、そちらにはあんまりロマンが無かったような気がする。
(応募して選ばれなかった悔しさで言ってる訳ではない、念の為)
2の中で最も”怪奇”という言葉が似合う気がする。
・水牛群/津原泰水
読んでて怖い以上にわくわくしちゃった。
・トカビの夜/朱川湊人
”怪奇”の所為か悲しい物語が多い中、読んでいてほっとする、読み終わってちょっとだけ微笑む事が出来た話。
・お狐様の話/浅田次郎
物語の狭間から悲しみが溢れている。
何でまたこんな強いお狐様が憑いてしまったのだろう・・・香奈の寂しさ、親の気を惹きたい気持ちにつけ込まれたのだろうか。
・帰去来の井戸/光原百合
これも読んでいてほっとする話。
映画のようだ。伯母さんが吉永小百合

「空に浮かぶ棺」(鈴木光司)は「リング」「らせん」読むなり観るなりしてから読んだ方が楽しめたのかもしれない。。。

どうでもいいニュース:
1のエントリで出版社名を誤字ってた。情けない。(今は修正済み)