社会学的ラブソング・改

音楽と本とお茶と美味しいものと面白いもので出来ている。あんまりはてブされたくないです・・・。

南極点のピアピア動画

昨年読んだ本・漫画(ZINE1冊含むが雑誌は含まず)が144冊だった。いいことだ。
「NOVA」シリーズ読み始めた辺りから加速ついた気がする。

「南極点のピアピア動画」(野尻抱介ハヤカワ文庫JA)読んだ。
ボカロ、ニコ動をモチーフにした、心温まるSFである。ボーカロイド*1は世界を救う!
ヌクモリティというやつだろうか。ちょっと違うか。
最初は省一が恋人・奈美へのメッセージとして上げた歌がバタフライエフェクト的に世界に作用していく話なんだと思っていた。
しかしそれ以上にピアピア動画というのは人を繋ぐツールでもあったんだ、という話である。
単独では実現出来ない事でも一人ひとりが持つ技術を繋いで形にしていく、人と人も繋ぐ、しまいには宇宙へと繋いでいってしまう。
すごいなぁ。
作中に登場する曲は実際に存在するし、この小説の為に作られた曲もあるようだ。
(作者のブログで少し経緯を知ったのだけど、その流れがニコ動らしさのあるエピソードだ、と思った。感じ方には個人差があります)
そしてインターネット優しい。
SNSも某掲示板も楽しく会話するだけじゃない、愚痴る事で救われる場合もあるけれど、罵り合い叩き合いだってある。今でも少なくはない。
内容を解ろうとしないでキーワードだけで引っ掛けて一方的に罵詈雑言吐いて去っていく奴だっている。
(思想の違う人と解り合えるほど世の中素晴らしくはないけれども・・・それでも「あんまりだ」って出来事はある)
作中のインターネットは、ほんと、優しい。
ボロカス言われる事もあるけれど、誰かの出したアイデアに「面白いからやってみよう」「こっちでこんな事出来るよ」って良い方に話が進んでいく、そういう人達が集まってくる。
メインの登場人物が陽の気放ってるんですかねぇ。
くそ人間としては「ねーよ!」と言いたい・・・けど、こんな世の中、こんなインターネットになればいいのにな、と願いたい気持ちが強い。
ねーよ!って位全てがつるりと上手く繋がっている、下手すりゃ螺旋みたいに1周半以上回って次の段階へ。
その”上手くいく”所が、読んでてほっとするよなぁ。
ゆるっと読めるし、ハードウェア的な部分でがっつりも読める。

で。
今はVtuberも登場しているし、この作品が書かれた頃とは違うSNSの様相なんだけど、作者的にはどうなんだろう。

*1:作中に出てくるのは小隅レイだけど、初音ミクって言っちゃってもよいのかもしれない